Coach the novice. 2nd season

アメフト未経験。早稲田大学卒。企業に就職できなかった私がひょんなことから社会人アメフトのプロコーチに。コーチ歴2年の新米コーチの悩みや気づき、おぼつかない足取りを辿っていきます。

エッセイ「燃えすぎて、震える。」

 ここのところ、東京都なり千葉県なりで外出を控えるように要請があって外に出られないものだから、ついつい世間に夜更かしが公認されたような気がして完璧な昼夜逆転生活に陥っていた。朝の11時に寝て夜の8時に起きる。それは「完璧な昼夜逆転」というボキャブラリー貧弱な表現以外では言い表せない。
 そんな生活だから、今日も寝ようと思ったのは世の中から遅れること約11時間。2020年3月30日の午前11時12分に、私の3月29日はようやく昨日になった。

 ふと目が覚めた。反射的に右手でスマートフォンを探す。全く話は変わるが、最近になってようやくアンドロイドフォンからiPhoneに機種を変更した。8年間、アンドロイド機種にこだわり続けてきた私だが、たったの3日だった。iPhoneが私の8年を否定するのに必要だった時間は。
 外も薄暗くなって、部屋の電気も消しきっているからiPhoneの光がまぶしい。視力がめっぽう弱く、眼鏡をかけると目がシジミぐらいに縮小する私だから画面にピントが合わない。おや?待てよ。外が薄暗い?体内時計はぐちゃぐちゃになっているもんだから、今何時かという動物に備わった本能的な時間感覚は全く頼りにならない。頭をゆすって寝ぼけまなこをアクティベートする。まぶたのシャッターをできるだけ絞ってiPhoneの画面に焦点を合わせると、時刻は17時23分。6時間と少し寝て目覚めたのか。まだもう少し寝れるなと思いながら、iPhoneSNSを一周する。起きて最初に、携帯に溜まった通知を全てクリアにするのが私のモーニングルーティンってやつだ。
 LINE。特に緊急のメッセージはなし。彼女からの連絡も、今のところないからバイト中か。
 Facebook。最近では同年代のFacebook離れが急激で、正直、誰かの誕生日を知らせてくれる役割しかこいつは担っていない。曰く、今日はドイツ時代の友人の弟の誕生日らしい。
 Instagram。スクロールでさかのぼるのが面倒な仕様があまり好みではないが、普段から可愛いと思っている誰かの写真が急に出てきたりして、サプライズ的にうれしいことがあるから仕方なく、昨日最後にみた投稿まで親指をスッスッと上に流していく。このスピードは誰にも負けない自信がある。
 そしてTwitter。生業である。俺のペン先からは今夜も原液のスペルマ。Creepy Nutsである。ちなみに今年の目標は、フォロワーを5000人まで増やすことで2020年3月30日18時32分の時点では1731人である。さあ、今すぐにこのエッセイを閉じて、ここから先は私のTwitterをフォローした後に読み進めてほしい。

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 フォローしてくれただろうか?おや?まだしていない雰囲気がある。

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 流石にフォローしてくれただろう。何?Twitterやってない?そんな言い訳が通用するのは大学の新歓活動で
「イベントの情報送るからさ!LINE教えて!」に対して
「あ、ごめんなさい。私LINEやってないんです~」のストロングスタイルで強行突破するときだけである。

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 おそらくこの文章まで見てくれているのはTwitterをフォローしてくれた方か、アダルトサイトよろしく、タッチする指に張り付いてくる鬱陶しすぎる広告を意地でも潜り抜けてお目当ての動画に辿り着こうとする探求心の強い方だろうから、そろそろ本題に入ろうと思う。
 Twitterを例によって親指でスワイプしていると、心臓が止まるような驚き。寝起きが幸いして声こそ出なかったが、健全な生活を送っている多くの方は声を出して驚かれたと思う。そう。ブリリアント改め、コージ・トクダさんと栗原嵩さんの福岡サンズ入団のニュースだ。インスタでは煩悩が先行しすぎた親指の速度のせいで見逃していた。
 眠気は吹っ飛んだ。次いで「すげえ!」「サンズすげえ!」的な感情が肩のまわりを強張らせた。その次は何か妬みに近いような、とにかく言葉になりづらい負の感情がやってくる。腹の奥からじんわりと外に溢れてくるような、青黒い塊。そのあとは同時多発的に感情のテロだ。

「これでアメフトがメジャーに!」
「やりやがったなサンズ…」
「めちゃめちゃ行動力あるなやっぱり!」
「いいなぁ、サンズばっかり…」

そして突然の悪寒。つま先から脳天までをぶち抜くようなビリビリ。震える。この時期の部屋は常時30度のエアコンが起動しているから寒いはずがない。布団をかぶってみるが震えは治まらない。
 iPhoneの画面が暗くなりスリープモードになったころ、ようやく震えが治まりはじめた。そして震えと入れ替わりで私の中にやってきたのは、沸々とした闘志のような、真赤と橙がうねるようなエネルギー。

武者震いだ!そう直観した。

 初めて生々しい武者震いを経験した。もともとナイーブな性格だから、試合前に緊張で少し落ち着かないことはよくあるが、これほどに純粋な闘志からくる震えは体験したことがなかった。闘いたい!!ぶっ倒したい!!俺たちの方がつえ―って叫びたい!!!
 得意の客観視を自分に水を差すように注ぐと、純粋とはいえ、心の内には色々な想いがある。話題をもっていく力のあるサンズに対しての嫉妬。こちとらトイレットペーパーを繋いでいる間にニヤつく吉野さん(完全に被害妄想である)に敗北感すら抱く。それでも、そういう負の感情を全て燃やし尽くして、火の粉を散らし、強烈な上昇気流が生み出す火炎の渦を自分の中に感じている。最高にワクワクしている。

 感謝しなければいけない。福岡サンズはすごい。素直にすげーな。って思える。日本のアメフト界に100年後も歴史の転換点として存在し続けるチームだろう。大義あるチームと闘うチャンスがある。熱戦の末、勝つチャンスがある。そのことに感謝しなければ。全部をひっくり返すチャンスなんだ。

 よし!!やるぞ!!燃えてきた!!

 ちなみに、福岡サンズとの対戦があるかどうかはまだ分からないのであった。

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